気持ち。
「・・・・あれ、あいつ今日いねぇのか・・?」
ある土曜の朝、上南バスケ部1年澤村正博は、教室に入ると開口一番にそう言った。
「あ、おはよー澤村。・・・あいつって・・さん?今日風邪で休みだって。」
澤村に気付いた成瀬があいさつついでに言う。
「・・・ふーん・・休みねぇ・・・。」
澤村はさほど気にしていない様子で席についた。
実際、元々人のことなど気にしない澤村、たいして気になどしていない・・・・・はずだった。
1時限目
「・・・・・。」
イライラ
2時限目
「・・・・・・・・。」
イライライラ
3時限目
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
イライライライライライライライライライライライライラ
放課後
(・・・あー―――――――!!)
部室で成瀬とお昼を食べていた澤村は、がたっと立ちあがった。
「・・・・ど、どうしたの澤村・・。」
成瀬は、びっくりしている。
(なんなんだ・・。)
澤村は髪をかきあげた。
澤村は朝から言いようの無い・・何かもやもやした気分に襲われていた。
イライラ・・に似ているが、何かもやもやした感じ・・暗く、重い、そしてどこか淋しい・・・。
そのわけの分からないもやもやのせいで、イライラする。
時間がたてば消えるかと思っていたそれは、時間がたてばたつほど、逆に増えていくばかり。
もやもやは増え、更にイライラ・・。
まさに悪循環。
おまけに何が原因かわからない・・。
原因がわからなければ対処法も無し。
(・・・・・帰ろ。)
こんな日は何をしてもしょうがない。
やる気を失った澤村は、そう思うと鞄を持った。
「成瀬・・俺帰るわ。」
澤村はため息をつき、帰ろうとドアを開ける。
「・・え、ちょっと澤村!?部活は!?」
成瀬はいきなり言い出した澤村に焦る。
「サボリ・・・・。」
澤村は手をひらひらと振りながら、歩いていった。
「ちょ!ちょっと澤村〜〜〜!!!」
成瀬は部室のドアから澤村の名を呼んだ。
しかし、成瀬に澤村はとめられない。
とめられるのはたった1人・・・・・。
「あーーーーー!!澤村君どこいくつもりーーーー!!」
この声の主、上南バスケ部マネージャーだけ。
「・・・・・・・。」
澤村は、立ち止まった。
いないはずのの声が聞こえてきたかだ。
「・・・・・・・。」
澤村は下げていた顔をそっと上げる。
「またさぼろうとしてたんでしょ!」
顔を上げると前方に、手を腰に当て怒っているの姿があった。
そのはこっちへ近づいてくる。
「・・お前・・休み・・だったんじゃ・・・・。」
突然のの出現に、澤村はしどろもどろに言う。
「ああ風邪?なんか風邪ぎみだったから休んだんだけど、なんか平気だし、
部活行きたいから来ちゃった。」
は近くまで来ると、あは。と笑った。
「・・・・・・。」
バコッ!
澤村はを鞄で殴った。
「なっ!いったーーーーい!!!!何すんのよ!」
は頭を抑えながら突然のことに怒る。
「うるせぇ・・へらへらへらへら笑いやがって!このバカ!」
澤村はへらへらと笑っているに腹が立った。
なぜだかわからない・・が、無性に腹が立ったのだ。
「大体ねぇ!鞄持って、今どこ行こうとしてた?また部活さぼろうとか思ってたんでしょ!」
「ああ!?んなことお前に関係ねぇだだろ!大体バカは風邪ひかなかったんじゃなかったねぇのかよ!」
「な!バカじゃないもん!バカバカバカバカ言わないでよね!澤村君のばーーーーか!!!」
売り言葉に買い言葉・・・・。
と澤村の、いつもの言い争いが始まった。
「あれ!さん!!どうしたの?」
2人の声にもしやと思って、顔を出した成瀬が、部室から声をかける。
「あ、成瀬くん!風邪直ったから来ちゃった。」
はにこやかに笑うと、部室の方へと走っていった。
「・・・・・・。」
澤村は、成瀬との姿を見ながら微笑む・・・・・微笑む?
「・・・・・は?」
澤村はその時、自分が笑っていることに気付いた。
いつもの人をバカにしたような『フッ』という笑いではなく、
何かを企んでいるときの『にやっ』という笑いでもなく、
優しいほほえみで・・・・。
(何笑ってんだ俺・・・。)
澤村はわけが分からなかった。
しかも、それと同時に、さっきまでのもやもやが消え、気分が晴れやかになっていることに気がついた。
(・・・・まさか。)
澤村はあのもやもやの意味が一瞬わかりかけた。
「澤村君ー!何してんのー!?」
部室からが叫んだ。
「・・・・・・。」
その瞬間、わかりかけたものが吹っ飛んでしまった。
(今・・何かわかりかけたような・・・。)
澤村は悩んだ。
「澤村君ー!?」
しかし、またが叫ぶ。
「・・・・・・・・。」
澤村は悩む。
「澤村君ってばー!!」
またまたは叫ぶ。
「〜〜っっあーーー!うっせぇなぁ!今行くよ!!!」
澤村は頭をかきながらに叫んだ。
(・・・・まぁいいか。)
澤村はそう思うと、成瀬が待つ部室へと、歩いていった。
終。
キリ番1000でありすさんへ捧げた物でした〜。
ありすさん!どうもありがとうございました!!