あたたかさとかおりと。
「さ〜わ〜む〜ら〜く〜ん〜、さ〜む〜い〜よ〜!」
何度目かのの声が部屋に響いた。
「うるっせぇな!何度も何度も!そんなに寒いなら、てめぇが暖房器具買ってこい!」
そんな何度も繰り返される言葉と、確かに自分も寒い体感温度に、
澤村はイラついてキッチンでコーヒーを淹れながらに怒鳴った。
「そんなお金ないよー。あ、でも安いハロゲンヒーターなら・・・
なんかうちに使ってないのあったっけ・・・でも今から取りに行くのも探しに行くのも・・・」
とはテーブルに額をのせながらブツブツと独り言を言っている。
「うちは夏は窓を開けて扇風機、冬は厚着。それでしのいでんだよ。
エアコンなんて贅沢品はねぇからな。やなら帰れ。」
マグカップをの顔の横に置くと、澤村は偉そうにを見下ろしてふんっと言い放った。
今日は、澤村の家には勉強を教えてもらいにきていた。
テスト間近で成績のまずいが、家に余っていた食料品と
強引さでなんとか教えてもらっている状況だ。
なので、澤村は若干機嫌が悪い。
それでも寒い寒いと連呼するのためにあたたかいコーヒーを淹れてあげたりしているのだが・・・・。
「まぁ、薄着してきたあたしが悪いんだけどねぇ・・・っ・・はくしゅん!」
「・・・・・」
「あー・・・・ティッシュ・・・。」
澤村は舌打ちすると、ティッシュを放り投げ、
ごそごそときちんと整頓された少ない衣類を漁った。
そしてが鼻をかんでいると・・・・
「うわっ!」
バサンッ!と、上から何かが降ってきた。
「え!?」
驚きながら手でどかそうとすると、
「うわっ!え!?ちょ!!??」
バサバサと、次から次へと降ってくる。
「そのくらいあれば平気だろ。」
暗闇の中そう告げられて、重い布の感触を押しのけて顔を出すと、
それは、澤村の上着類だった。
澤村の持っているほぼ全ての上着をの上にかぶせてきたのだ。
「こ、こんなに・・・・。」
「それ着て羽織って、早く黙って勉強しろ。そして帰れ。」
澤村はそう言うと、テーブルを挟んでの向かいに座る。
「帰れはないでしょ!」
はむっとしながら返した。
「・・・・・」
それでも澤村の優しさを感じ、重ねられたあたたかさを感じ、
は少しほほえみながら澤村の上着の一枚を取り、着る。
「・・・・・・・・」
それは華奢だと思う澤村でも一応、男。
少し大きくて、そして・・・・澤村の香りがした。
「・・・・・・」
はなんだか少し嬉しくなって、ふふっとほほえんだのだった。
「・・・・おい・・・」
「・・・・なに〜?」
「お前・・・・」
「ん〜?」
「なんで!!今度は寝るんだよ!!!勉強しろよ!!!」
「寝てないよー・・・ちょっと、眠くなったから・・・休憩で突っ伏してる・・・だけ・・・」
そして、あたたかくなって、今度は睡魔に襲われたに青筋を立てる澤村の姿があったのだった・・・。
終。
2017/10/28...