雨の日はご注意を。
ピンポーン
「・・・・・・。」
澤村はチャイムの音に、うっすらと目を開く。
時刻はもう午後を周り、少したったころ。
昨夜は遅くまでバイトがあったため、寝ていた澤村は、チャイムの音で起こされた。
しかしどうせ新聞勧誘か何かだろう。澤村はそう思いチャイムを無視し、また目を閉じる。
ピンポン!ピンポン!!ピンポン!!
しかし、眠りたい澤村に、たてつくかのようにチャイムは鳴り響いた。
「〜〜〜〜〜〜っっうっせぇな!!」
その音に、澤村は耐えられずに、がばっと起きる。
「誰だよ・・・。」
澤村は、そうつぶやきながら眠そうに目を擦り、玄関へと向かった。
「は・・・い・・・・。」
澤村はいきなり飛びこんできた目の前の光景に唖然とした。
「・・・澤村君・・・・。」
玄関を開けるとそこには、ずぶ濡れになった上南バスケ部マネージャーの姿があったのだ。
「・・・・・・。」
澤村は頭に手を当て、しばらく何かを考える。
そして、呆れた顔しながら口を開いた。
「・・・お前何してんだ?」
「聞いーーーーてよーーーーーーーーーーー!!!!」
「・・・・ようするに、めかしこんで買物してたら、
今まで晴れていたのにいきなり夕立が降ってきて
雨宿りしようにも出来る場所がなくって
それで俺ん家が近かったことを思い出して
ずぶ濡れになりながらココまで来たっつー・・・そういうことか?」
澤村の言葉の後、『聞いてよーー!!!』と、いきなり叫び出し、
今までのいきさつを1人、怒りながら息つくひまも無く語ったの話しを、
澤村は顔をひきつらせながら整理した。
「その通り!!!」
澤村の言葉にとりあえず玄関に入れられ、立たされていたはうんうん。とうなずく。
「・・・その通りじゃねぇ!このバカッッ!!!!」
がの言葉に澤村は切れた。
「そんなことのために俺は起こされたのか!貴重な俺の睡眠時間削りやがって!!!!」
「・・・そんなこと?そんなことじゃないわよ!!!服とか濡れて大変だったのよ!
大体ねぇ、昼まで寝てるあんたが悪いんでしょ!」
「俺は夜中まで働いてたんだよ!!なんにもしないで昼まで寝てる、てめぇと一緒にすんな!!」
「なっ・・・あーもういいわよ!とにかくお風呂借りるわよ!!風邪ひいちゃう!!」
澤村との言い合いに嫌気が差したはずかずかと、部屋に上がりこんだ。
「お、おいちょ・・!」
「あ、あと服かしてね。」
澤村の言葉を無視しは適当に床に畳んであった服を掴み、風呂場へと入った。
「・・・・どこの国に男の部屋来て勝手に風呂はいる女がいるよ!!」
すると、いきなり風呂場のドアが開いた。
「覗かないでよ。」
はそう言うと、またドアを閉めた。
澤村の額に青筋が立つ。
「・・・誰がてめぇなんか覗くか!」
澤村はドアに叫んだ。
遠くでシャワーの音が聞こえる。
「・・・あ〜・・もう、眠れねぇ・・・。」
澤村はが床に落とした水滴をふいた後、
もう一眠りしようかと布団の中に入ったが、
一度冷めた眠気はそうは戻らない。
おまけにシャワーの音が気になり、澤村はがばっと起きあがった。
と、シャワーの音が止まった。
(・・コーヒーでも入れてやっか・・。)
澤村はそう思い、ベットから降りた。
澤村はタバコを口にくわえ、コーヒーを入れる。
「あ〜すっきりしたぁ!!」
するとが風呂場からご機嫌に出て来た。
「あ、澤村君。お風呂ありがとね。」
澤村を発見したは笑顔でお礼を言う。
「・・・・・おう。」
澤村はの言葉に振り向きもせずむすっと答える。
するとはそのままパタパタとテーブルのある方へと歩いていった。
澤村がコーヒーを持ちの方へ行くとの後姿が目に止まった。
はわしゃわしゃと、髪の毛を乾かしていた。
澤村のシャツとジーパンはだぼだぼで、少し肩が出ている。
その光景はいつもは荒っぽいも、さすがは高校生。
少し色っぽかった。
(・・・この女には危機感がないのか・・・。)
澤村は呆れながらの方へと歩いていく。
「ほれ、コーヒー・・・。」
澤村はそう言うとの頭上からコーヒーを渡した。
「あ・・・ありがとう・・。」
は少し驚いたようにそう言った。
いくら冷たい澤村でも、家にきた相手にくらいコーヒーは出す。
たとえ押しかけて、無理やり服を奪い、風呂に入ったでさえも。
は手を止め、コーヒーを一口飲んだ。
「あったか〜い・・。」
するとは幸せそうに微笑む。
「・・・・・・。」
その様子を見ていた澤村は呆れながらに言った。
「・・お前さぁ・・普通男の部屋来て風呂はいるか?」
「へ?」
とは素っ頓狂な声をあげる。
「ああ・・そういえばそうだね・・・・・でもま、澤村君だから。」
は少し考えた後、へらっと笑う。
「・・・俺も一応男なんだけど。」
その言葉に澤村はコーヒーを飲みながら言う。
「澤村君は、澤村君よ〜。」
は分けのわからないことを言って笑う。
「・・・・・。」
これ以上言っても仕方がない。
澤村はもう何も言うまい・・。と思った。
「しっかし、何もない部屋ね〜。」
は部屋をぐるりと見渡しながらそう言った。
「・・ああ、買う金もねぇし、必要最低限ってな。」
澤村はコーヒーを飲みながら言う。
「ふ〜ん・・・・は、はっくしょん!」
っとはいきなりくしゃみをした。
「・・やばい、風邪ひいたかも。」
はつぶやく。
「・・いつまでも髪濡らしてるからだよ・・ほら、タオル貸せ。」
「え・・・。」
そう言うと澤村は、ベットを降りるとの手からタオルを奪いの髪の毛をふきだした。
「・・・・・・。」
はされるがまま澤村にふかれていた。
「・・澤村君、拭くのうまいねぇ〜・・。」
はぼけっとしながら言う。
澤村のタオルさばきはうまかった、それは美容院並で、
ふかれているは気持ちよく眠くなってきた。
「ああ・・いろんな経験してっからなぁ。」
澤村はせっせと髪をふきながら答える。
(眠い・・・。)
はお風呂に入り、コーヒーを飲み、体が温まってきていた。
後はもう寝るだけだ。
はうつらうつらする。
「はい、終了・・。」
その時、澤村の手が止まった。
「・・ありがとう・・・。」
「おう・・・あ、おかわりいるか?」
拭き終わった澤村はのカップが空になってるのに気がついた。
「うん・・・・。」
はぼーっとしながら頷く。
そして澤村は立ちあがりカップを手に台所へ向かった。
「澤村君・・・。」
するとはぼそっと澤村の名を呼んだ。
「・・ああ?」
澤村はコーヒーを入れながら答える。
「眠い・・・・。」
ぼすっ。
「・・・・ん?」
背後からぼすっというやわらかいものに飛びこむような音がした。
「・・・・・・・・・・・・。」
澤村はまさか・・。と思い振りかえる。
「すー・・・。」
するとそこにはベットに飛びこみ布団にうずもれているの姿があった。
「・・・・・・・・・・・。」
澤村は絶句する。
「・・こっの女は・・・・。」
額には青筋が立っていた。
「おい!起きろてめぇ!!」
澤村は近くにいき怒鳴る。
が。
「すー・・・・。」
反応無し。
は眠ったらてこでも起きなかった。
「・・・ガキの寝方かよ・・・。」
澤村はため息をつく。
「しょーがねぇーな〜・・・。」
澤村はあきらめ寝かすことにした。
(・・・眠ぃ・・・。)
あの後、片づけをしたり宿題をしながら過ごした澤村だが
やはり昨日遅かったためか眠くなってきた。
「・・・・・・・・・。」
「すー・・・・。」
澤村は幸せそうに寝ているを見つめる。
「・・・・・・・・・。」
そこで澤村は何を思いついたのかいつもの不敵な笑みをした・・。
(あったかい・・・・・。)
何時間たったのだろうかは側にある、『温かいもの』を抱きしめた。
(・・・・・あったかい?)
がは我に返る。
なぜ布団の中に自分以外温かいものがあるのか・・。
「・・・・・・・・・。」
はまさかと思い、目の前のものを見る。
が、日はとっぷりと暮れていて、部屋の中は暗かった。
しかし、暗い中でもわかる・・・それはあきらかに『人』だった・・・。
はおそるおそる上を見る。
と、そこには寝顔も綺麗な澤村の顔があった。
「さ!澤村君!!???」
は叫ぶ。
「ん〜・・?」
澤村は端整な顔をしかめ目を開いた。
「ああ・・起きたのか・・。」
澤村は寝惚け眼で言う。
「あ・・あの・・。」
は真っ赤な顔をしている。
「ん〜?」
澤村はまだ半分を閉じている。
「離してくれない?」
「あ?・・・ああ。」
澤村はニヤっと笑った。
そう、今の腰には澤村の手があり
の顔は澤村の胸の辺り。
は今澤村に抱き枕状態にされていたのだ。
密着度100%
「どうすっかな・・・。」
澤村はにやにやと笑う。
「・・っ・・離して〜〜〜〜!!!!」
は澤村の胸を押し、離れようとするがびくともしない。
されどは真っ赤になりながら澤村の胸を押す。
「やだね・・・。」
そんなを見ながら澤村はにやにやと楽しむ。
「って・・あああ!!!!今何時!?」
そこでは部屋が暗く。
もう日が暮れている事に気付いた。
「ん〜・・・7時半。」
「7時半!!!???」
時間を聞いたは澤村の腕の中で絶叫する。
「いやーーーー!!!お母さんに怒られる!!」
はそう言うと澤村の腕の中から出ようとする。
が。
「おっと・・そうはいかねぇなぁ〜。」
澤村は逃げ出さないよう腕に力を込める。
「ちょ、ちょっと!ふざけてる場合じゃないって!怒られるよ〜!!」
「ふざけてなんかねぇよ〜?
ただ、いきいなり来て風呂はいって勝手に人のベットで寝てそれで帰るなんて
そんな都合のいい話ねぇよな〜?」
澤村はにやっと笑う。
「う・・・・・分かったわ・・明日の昼ご飯おごってあげるから!」
「明日だけだぁ・・?」
「う・・・・・3日!」
「一週間。」
「ええ!?・・・・・わ・・分かったわ!一週間で!!」
「おっし、交渉成立♪」
そう言うと澤村はぱっと手を離した。
「ぎゃーーー!!怒られる〜〜〜!!!!!」
澤村の腕から抜け出したはそう言うとバタバタと外に干しておいた服を取り込み
風呂場へ駆け込み1分で出てきてカバンをつかみ玄関へと向かった。
「じゃあね!澤村君!!服洗って返すね!!じゃ!!」
「おう♪約束忘れんなよな〜。」
そう言うとは澤村の家から出ていったのであった。
「おっしゃあ。1週間分昼飯代浮いたぜ♪」
そしてそこにはご機嫌な澤村だけが残った。
終。