ようこそ、15
「・・・・・・・」
トルコに抱きついたままの形で、しばし泣き続けたは、
ようやっと落ち着いてきた頃、何も考えず閉じて泣き続けていた瞳をゆっくり開いた。
そして薄暗い中見えたトルコの着ていた服が目の前に見え、
はふと、冷静になり今の状況を頭の中に浮かべた。
(・・・・・・・・・)
そして、そのまま顔を上げることも出来ず、硬直した。
静まり返った静かな部屋。
そう、ここは日本宅の客間。
そして部屋の中にはトルコと、トルコに抱きついている自分と、日本とギリシャ・・・・が、いるはず。
みんなの視線はおそらく自分に集まっているだろう・・・。
顔を上げたいが・・・上げられない・・・上げた後が気まずくてどうすればいいか・・・・
と、は思ったままトルコの胸にそのまま顔をうずめていた。
すると、
「もう、落ち着いたかい?」
ポンと頭に手を置かれるのと同時にかけられた声は、落ち着いた低めのいつものトルコの声。
「・・・・あ・・はい・・・すみませんでした・・・・」
はそう言いながら、顔を伏せたままそっと身体を離す。
しかし、熱い・・おそらく真っ赤になっているだろう顔を上げる事は出来ず、
俯いたまま黙っていると、
「今、冷たいタオルお持ちしますね。」
優しい日本の声がして、日本がすっと立ち上がり、部屋を出て行く気配を感じた。
(日本さん・・・ありがとうございます・・・)
自分の気持ちを察してくれて、席を外してくれただろう日本には心の中で感謝する。
しかし、もう一人いるのを忘れてはならない。
「・・・大丈夫・・・?」
そっ・・と、すぐ側に座ったのは、そのもう一人、ギリシャだった。
「あ、はい!すみません、ちょっと取り乱しました。」
は、あははと軽く照れ笑いをし、ギリシャの顔を見上げると、
「・・・・・」
ギリシャの表情はとても切なそうで、悲しそうで・・・
何故、自分のことでギリシャがそこまで・・・と思いながら、ほんの少し見つめていると、
「!」
ギリシャにぎゅっと抱き締められた。
は突然のことで、なすがまま、引っ張られるようにギリシャの腕の中に倒れ込んだ。
「・・・・・あ、あ・・の・・・」
よく状況がわからないまま、はギリシャに問いかける。
ギリシャの身体は顔や穏やかそうな性格とは反して、がっしりとしていて、
薄着のせいでその身体の感触がもの凄く近く、の手のひらや、腕、身体で感じ取れる。
そしてギリシャは、少し背を丸め、の肩に顔を伏せる。
ギリシャの緩いウェーブのかかった髪が首元に触れる。
「・・・・・・・・・」
あっという間に再度、の顔は真っ赤になった。
絶句し、何も言えないまま混乱するが、再度、気を持ち直し、
「あの・・・もう大丈夫ですよ。ありがとうございます・・・」
慰めようとして抱き締めてくれたのだろう・・・と、は思い、
ギリシャの胸元でそう言いながら、離してくれるよう、
少し手のひらでギリシャの身体を押すのだが・・・
「・・・・・・」
ギリシャは黙ったまま、離してはくれなかった。
「・・・・・・」
そしてが押しても、ギリシャの身体は全く動かず、腕も緩まない。
ギリシャはじっと止まったままだ。
はギリシャの真意が理解できず、困惑したままその状態でいるしかなかった。
(・・・ごめん・・・)
その時、ギリシャは心の中でに謝っていた。
さっきまで、が辛くて悲しくてトルコに抱きついて泣いていたとき・・・
ギリシャはの辛さよりも、その場の光景のことで頭がいっぱいだった。
そう、トルコに抱きついている・・・抱き締めてるトルコ・・・・
その二人の姿がとても腹立たしくて、ギリシャは一人、拳をきつく握り締めていたのだ。
の事を考えなければいけないときに、そんな嫉妬をしていた自分が恥ずかしい・・・
でも、トルコから離れた後、すぐさまの側に座ったのは・・・・
もうあいつに取られたくなかったから・・・・
あいつの側にいて欲しくない・・・
あいつに抱き締められないで・・・・
いやだ・・・・
そして、に声をかけた。
を心配している振りをして・・・・
『・・・大丈夫・・・?』
さっきまで泣いていたが、照れくさそうに笑っていて、
あいつの所で泣いて、また元気になったのが・・・・悔しかった・・・・
だから、手を伸ばした。
続。
2010/04/29....