お見舞いへ行こう!01













「よっし!休憩にすっか!」


トルコは、机の上の書類をまとめ、手に持ち、トンっと端を机に当てて整えると、
仮面をつけていても見える口元を少し歪ませ、嬉しそうに微笑みながら、椅子から立ち上がった。


〜〜!お茶にしようぜ〜〜!」


仕事部屋の扉を開けながら、家の中のどこかにいるであろうへと、大きな声で叫ぶ。






「トルコさん・・・休憩ですか?」


ズカズカと、体格に見合う大股で乱暴に歩きながら、
トルコがリビングに向かうと、ソファの側に立っているを見つけた。


「ああ・・・・・・・・・・って、どっか行くんかい?」


の姿を捉えて、表情がパッと明るくなったトルコだが、
それは一瞬で、次の瞬間には真顔になって、の手元を見ていた。

の服装は、朝と同じだが、腕には上着をかけ、
ソファの上に置いたカバンの中を、何やらごそごそと見ている。
見るからに、これから外出する様子だ。


「ああ・・・はい、ちょっと・・・・・・・・・お見舞い・・・に・・・・」


トルコの言葉に、は途切れ途切れ、少し気まずそうに、あは・・と微笑みながら言う。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・」




瞬時に、トルコの機嫌が最高潮に悪くなった。


まるで、「あ〜〜・・・もうやってられねぇ〜〜・・・」という言葉を身体全体で言うかのように、
両腕を胸の前で組んで、脱力しながら片足に体重を乗せ、
首を傾かせ、斜め上のあさっての方向を見て、はぁー・・・と盛大なため息をついている。



「・・・・・・・・・・・」


その姿を見て、はうわぁ・・・と、微笑んだまま静止する。



「・・・・また、あいつんとこかい・・・・」


見えないが、おそらく仮面の下で、相当寄ってるだろう眉間のしわを想像しつつ、は言葉を返す。



「・・・ギリシャさん・・・の、ことですか?」



「・・・・・・・あー・・・・」


トルコはやる気のない声で、低く短く答える。


「あー・・・・・ギリシャさんの所にも行きますけど・・・・今日は・・・キプロスさん・・・」


と・・・と、言葉を続けようとしただが、






「キプロスぅ!?」





キプロスの名を出した途端、大声で叫ぶトルコに遮られた・・・。



「・・・・・・・・」


はやっぱりか・・と、苦く笑いながら、大声に身体を硬くした。




「なんであいつんとこまで行くんでい!?」




殴りかかってくるんじゃないかという、勢いと剣幕で、
顔の距離3センチという所まで詰め寄ってきたトルコに、
は心の中で悲鳴をあげながら、数歩後ろへ下がる。



「い、いや・・・だって・・・・先日、あんなことになっちゃったから・・・
今、なんか・・・・凄い風邪ひいて、寝込んでるってトルコさん言ってたので・・・・
電話したら、電話に出ないから・・・ちょっと、心配になって・・・行かなきゃな〜・・・って・・・・」



と、言いながら、は落ち着いて落ち着いて・・・と、
両手を前に持ってきて、手のひらをトルコに見せる。





約一週間前のある夜。


はネットのニュースを見ていて、ある国の名前を目にする。

それは、自分が今暮らしているトルコのすぐ近くの、ご近所さんの国。
その国とは、この世界で暮らすようになって、しばらくしてから会った。

色々とトルコと問題があるらしく、トルコはあまり好いていないようだが、
でも、昔から色々あり、同居したり関係がいい時もあったようで、
なんだかんだずっと付き合ってきているらしく、
トルコは機嫌が悪かったり文句を言ってたりもするが、
その国を含め、近所の四ヵ国・・・一国はトルコしか国と思ってないが・・・とは、よく会っていたりする。

もある日、トルコと一緒にその国たちに会った。
一人はギリシャなのだが、他の三人とは、その時が初めてで、
その後、一対一や、トルコがついてきて一対二で会ったりしたが、
六人・・・五ヵ国+で集まって会うことがなんだかんだ多くなったので、
その四ヵ国とは、気心が程よくしれていて、仲良くしている。

その内の一人の名前を、ニュースで見つけ、そして、後に続く文章に思わず小さく叫んだ。


その名はキプロス。


ニュース記事の内容に、右側の髪を伸ばしたアシンメトリーな髪型の、
おだやかなキプロスの姿を思い出し、
キプロスさんは大丈夫なのか・・・と、は焦り、
トルコの元へ駆けて行き、聞いてみたのだが・・・返ってきた返事は、




『あー・・・今、すげぇ風邪ひいて寝込んじまってるらしいぜぃ。』



という物で、あ・・そっか・・と思った。

そういう状況になると、国『さん』達は風邪をひいてしまうということを思い出し、
今も寝込んでいるギリシャの姿を思い出した・・・。



それから数日後、バタバタも少し収まったようなので、
キプロスに電話をかけてみただが・・・キプロスは電話に出なかった・・・・。

これは・・・大丈夫なのか・・・?と、心配になったは、
おそらく・・・いや、間違いなく、トルコの機嫌が悪くなるだろうが、
直接、家に行って様子を見てきたいなぁ・・・と、思い、今に至るのである。











「・・・・・・別に、行かなくていいんじゃねぇか・・・・。」



の言葉に、トルコは視線だけをからそらし、横を見ながら、ヘッと、言い放った。


「あー・・・はは・・・・。」


そのトルコのふてくされた様子に、は苦笑いしながら、続けた。


「いやいや・・・何回か電話したんですけど、やっぱり出なくて・・・。
ちょっと、やっぱり心配なんで、ギリシャさんの所にも今日行く予定だったから、行ってきます・・・ね?」


いいですよね?と、言葉にはしないが、は仕草で問う。

別にご近所の友達に会うのに、トルコの許可がいるわけではないのだが、
居候の身・・・+トルコには好意を寄せられているので、
なんとなく、トルコに緩い許可を得ないで他の国に会いに行ったりするのはしないようにしている。


「・・・・・・・・・・・・・」


トルコはまた腕を組み、顔を背けたまま、面白くない様子で口をへの字に曲げ、
不機嫌オーラを出しながら、ため息のような息を一つ、つく。


「あ!そ、それに!ギリシャさんとキプロスさんの所だけじゃなくて、
エジプトさんの所も行く予定なんですよ!
・・今・・・体調が悪いみたいですから・・・・・。」


と、トルコのだんまりな態度に、は、さっき遮られて言えなかった言葉の続きを言う。



「・・・・・・・・・・・・・」



なんとか許可を得ようと、焦りながら微笑むだったが、
話の最後に、の表情が曇りだし、
終りには目を伏せて少し悲しそうな表情をしているのを、横目でトルコは見ていた。


それは、エジプトのこと・・・・・




(・・・じっさまのこと言われたら・・・しかもそんな顔で言われたらよぉ・・・
ダメだなんて言えねぇーじゃねぇか・・・・)




まったく。と、思いながら、トルコは目を閉じ、もう一つ、重いため息をつく。



そして、




「わあーったよ!別に行ってかまわねぇよ!」




トルコはそれでも不服そうな顔をしながら、組んでいた腕を腰に置き、そう言った。


「本当ですか!」


の表情がパッと明るくなる。


「ただし!」


しかしそこで、トルコのよく通る低い声とともに、
の目の前には、トルコの人差し指が置かれた。

そしてトルコは、ニッと笑うと・・・・







「俺も一緒に行くからな?」







そう、付け足した。


「あ、はい・・・・・・・」



も少しぎこちなく微笑みながら、返事をする。

正直、トルコと一緒に、ギリシャとキプロスのところに行くのは、出来れば避けたかった。
顔を合わせれば喧嘩したり、揉めたり、機嫌が悪くなったりするので、正直、疲れる。
だが、この二人に会う時は、大抵いつもトルコがついて来るので、
今回もそうだろうなとは思っていた。

別に二人きりになりたいわけでもないので、疲れること以外に問題はない。






「よし!んじゃあ、支度してくっから待ってろい!」



トルコはそう言うと、身体をひるがえし、部屋に戻ろうとする。

と、そこではあることに気がついた。


「って・・・トルコさん、お仕事は?」


トルコは歩き出していた足を止め、ピタッと立ち止まると・・・・






「・・・・・今日は病人のために半休でい!!!」






そう言い、ダッと部屋に駆けていったのだった。




「・・・・・あーあ・・・・・まったく・・・・・・」



はそんなトルコの後姿を、少し微笑みながら見つめていた。











続。


色々分からない部分の設定は、勝手に作ってしまったので、
本家と現実と違うとこがあったり、今後なったらすみません・・・・。



2013/04/01....