一瞬のチューリップ畑。
「わぁ!綺麗ですねぇ!」
は一面のチューリップ畑を見て、両手を広げて少し大きな声でつぶやくように言った。
「だろい?」
背後からゆったりと歩いてきたトルコはそんなを見て嬉しそうに微笑む。
休日をふたりで、少し離れた田舎町へ出かけた。
トルコがに見せたい物があると言ったからだ。
そして着いたのがここ。
一面の、色とりどりのチューリップ畑。
車を運転したのはトルコ。
運転できるんですか。なんて、は失礼ながらにも言ってしまった。
馬鹿にすんない!とトルコはの頭をくしゃくしゃともみくちゃにする。
ちょ!やめてくださいよ!なんてふたりで笑いながら車を走らせて小一時間。
にはわからないトルコ語の曲を流し、トルコは鼻歌交じりに運転していた。
そんなトルコとのドライブデートは楽しく、
ナッツを食べたり、ポットに入れたチャイを飲んだりしていたらあっという間だった。
そしてついたら、楽園のような、一面のチューリップ畑。
は背後のトルコに振り返り微笑む。
「トルコさん!ありがとうございます!」
トルコは嬉しそうに、片手を上げた。
そしては続ける。
「来年も来ましょうね!」
と。
「・・・・・・・」
その言葉に、トルコは微笑みながら、瞳を伏せた。
来年・・・・は、自分の隣にいるのだろうか・・・・。
人間は自分たちといると、自分たちと同じように歳を取らなくなる。
そのことを知ったは喜んだ。
『じゃあ!ずっとトルコさんと一緒にいられますね!』
と。
しかし、そんな人間が何人いただろう・・・・。
何人いて・・・・何人発狂し、去って行っただろう・・・・。
自分たち、『国』といると、まともな人間は時間の間隔に気が狂う。
これは経験上、国の皆が知っている悲しい現実だ。
だから、人間のパートナーは作らない。
だが・・・・・
トルコは愛してしまった。
また、同じ過ちを繰り返してしまった・・・・。
若い時に、もうこんなことは二度としないと決め、
長年、避けていたことを・・・・今になって・・・・・・また・・・・。
「トルコさん!写真撮りましょう!写真!自撮り棒持ってきました!」
「はは!自撮り棒か!」
だが・・・できる限りの間でいい・・・・・。
ほんの少しの間でいいから・・・・・。
彼女の気が狂う前に手放すから・・・・・・。
だからどうか・・・・・・・
ほんのわずかな間だけでも・・・・・・
長く・・・・長く・・・・・・
一緒にいさせてくれ・・・・・・・・・。
「行きますよーーー!」
トルコはそう願って・・・・今日も刹那の一日を、と過ごすのだった・・・・・。
終。
2018/09/26....