はじめましてのあとに・・・。













「んー・・・・」



ずっと見つめていた本から目を離し、本を膝上に乗せ、は大きな伸びをした。




(・・・今日も良い天気だ・・・)



目を閉じ、上に向けた顔をそのままに目を開くと、目の前に晴れ渡った綺麗な青色の空が広がっている。


ここはトルコの住むマンションの庭・・といっても、ここは国達が住む世界の玄関になっているので、
庭と呼ぶのはどうかと思うが、庭と呼ぶに相応しい造りなので、庭と呼んでいる。

広い庭には噴水やソファがあり、周りには時折サワサワと気持ちのいい音をたてる木々が立ち、
優しい日影を作り出してくれている。
そしてはそんな庭の、噴水の前に置かれているソファに座り本を読んでいた。


(眠くなってくるなぁ・・・)


ソファの背もたれにゆったりともたれかかると、目が疲れたせいもありとろんとしてきた。
このまま眠ろうか・・と、は思いながら、もう一度空を見上げようとして、
途中でふと、外へとつながる鉄製の柵が視界に入った。

「・・・・・・・」

はそのまま顔を柵へ・・・外との出入り口へと向けた。



「・・・ちょっと・・だけならいいかな・・?」



はにやりと微笑むと、家の中へと続く一枚ガラスの窓をちらっと見て、トルコがいないことを確認する。

以前、トルコに「一人で外を出歩くなよ。行きたいときは声かけろ。」と言われたのだが、
ここに来て、トルコの家に居候し始めて早数週間・・・・
行く用事も特になかったので、今まで外に行きたいと思わなかっただが、
ふと今、外が気になった。

この世界はどうなっているのだろう・・・。
ただ「見てみたい。」というだけの単純な好奇心が湧き上がってきた。

以前、日本が住んでいる家へ行っただけで、あの道しかまだ知らない。
確かここを出て真っ直ぐ行くと、道は丁字路になっていた。
あの時は左に進み、日本の家へ行った。
そのことを踏まえて考えると、おそらく右は・・ヨーロッパ方面だろう。
は少し想像して心を躍らせる。


仕事している最中に今行きたいと声をかけるのは悪い。
今度、時間のある時で・・と言っても、多分トルコのことだ、
いそぎじゃねぇから息抜きに・・などと言って一緒に行ってくれるだろう。
まだ数週間しか一緒にいないのだが、トルコがそういう人だということは既に分かっていた。

今度外に連れて行ってくださいと、夕飯の時にでも言おう。
だからとりあえず今は・・・ちょっとそこまで見てくる位なら・・いいかな?と、
親の言いつけを破り、こそこそ抜け出す子供のように、
はソファから腰を上げると、家の中の様子をチラチラと伺いながら、
そっと足を忍ばせて、外へと続く鉄製の柵へと向かった。





(遠くまで行きませんから・・すぐ帰ってきますから・・・)



そっと柵を開き、音がしないようにそっと戻す。


「・・・・・・」


そのままもう一度、少し遠くなった家の中の様子を伺って、
トルコがいない事を確認すると、それ!とは足音を立てないよう小走りで外へとかけていった。








「右右〜。」

真っ直ぐに延びる道を、少し進んで、突き当たりの丁字路に出ると、は右へと曲がる。


「・・・・・」


しかし曲がって数歩で足が止まった。



(何・・・これ・・・)


そこに広がっていたのは、とても奇妙な光景・・・しかし、


「海・・・綺麗ーーー!」


思わず小さく声を上げてしまう光景でもあった。


手前には奇妙な形をした岩と砂の大地が広がり、
少し先に緑が見え、その先にキラキラとした海が輝いている。
日本とは違う空の青さも加わり、の心は躍った。
少しだけと思ったが、これはあの海まで行くしかないと、はうきうきと足を進めた。





(あ、海の音と匂いがする・・・)


遠くに思えた海は意外に近く、岩と砂ばかりの歩きにくい道を歩いていると、
すぐに緑のある所に移り、そこに来ると海の音や匂いが突然しだした。
不思議な事には、もう大分慣れてしまった
そのことにあまり驚くことも、気にすることもなく、足を進める。




「う・・わぁ・・・・」



進んできた真っ直ぐな道が海沿いに斜めに方向を変えると、
目の前には白い砂浜と、見たことのない青色をした海が、地平線まで大きく広がっていた。


(本当に・・白い砂浜ってあるんだ・・・)


足を止め、目の前に広がる光景に言葉をなくす。

テレビでは見たことはあるが、今までどす黒い砂浜しか見たことのないにとって、
実際に目の前にある白い砂浜はとても不思議で、とても美しくて、
ため息が口からこぼれ落ちる。

そして海の青さ・・・これは何色だ?青ではない、もっと違う色名があるはずだ。と、
濃いけれど透明な、その澄んだ青い海を見つめて、は心の中で思った。

波立つたびにキラキラと輝く青い海と、本当に白い砂浜・・・



(楽園だ・・・・・)



呆然と、その海と空と砂浜を見つめて、は思う。







「イタリアァァアァ!!」






「!?」



しかし突然、少し遠くの方から低い男の怒声が聞こえてきて、はビクッと肩を振るわせた。
そして咄嗟に、声が聞こえてきた方に顔を向けると・・・・





「チャオーーーー!」




「!」


前方から、見知らぬ男性が物凄い速さでこちらへと走って来ていた。



(あ、え・・ど、どうしよう!!)


人と会ってしまいおろおろとするだが、そうこうしている間に、
その男性はの目の前まで到着してしまった。


「わ〜!やっぱり知らない女の子だー!チャオチャオ!はじめまして!
俺はイタリア!ヴェネチアーノだよ!
君と会うの初めてだよね〜?どこの国〜?ここで何してるの〜?」

自分をイタリアと名乗るその男性は、の前まで着くと、
大きな身ぶり手ぶり付きでつらつらと話し始める。


(・・・・・な、なんか・・近い・・)


は色々突っ込みたいところはあるが、とりあえず、
顔の近さが気になり、思わず一歩足を引いた。

「ヴェ?な、なんで逃げるの??大丈夫だよ!俺、何もしないよ!怖くないよ!
あ、君、日本に似てるね〜。俺、日本と友達なんだ〜。日本知ってる??」

「・・・・」

日本の名前が出てきて、固く強張ったの表情が少し緩むと、
イタリア、ヴェネチアーノと名乗る、茶色い髪にくるんと一本だけ出ている前髪が特徴的な、
にこにこと穏やか・・緩いという言葉の方が、適切な雰囲気をかもしだしている彼は、
おっ、との表情の変化に気付き、更に言葉を続けようとする。


「日本知ってるの?俺達、これから日本のところにごっ・・・」


は息を飲んで、思わず更に一歩、後ろへ下がった。



「イ〜タ〜リ〜ア〜〜〜・・・・」



「イタイ!イタイ!痛いよぉ!ぎゃー!ごめんなさい!!許してぇ!」



話しているイタリアの背後に、日本人には見慣れない
金色の髪をオールバックにした青い眼の男性が現れたかと思うと、
その人は眉間に皺を寄せた、泣く子も黙る表情で、
イタリアの頭をげんこつで挟み、ギリギリと締め上げた。



「・・・・・・」


近くで見ているだけなのだが、その人が見上げるくらいの長身で、
服の上からでも、かなり屈強な肉体の持ち主だとわかる体つきだったので、
やけに怖く感じて、は今のうちに逃げ出そうかとも思ったのだが・・・
このまま逃げて追いかけられないから、捕まらないか等々色々考えてしまい、
動くに動けず、少し身体を強張らせながら、その場で目の前の二人を見つめていた。


「ごめんなさい!もうしないから!!ゆるしてぇー!」


「お前のもうしないは何度あるんだ!!!いつもいつも話の途中でかっ・・・」


イタリアの頭を締め上げている、金髪のその人は、
ギリギリと力を入れながら、ヴェーヴェーと、よくわからない鳴き声をだしているイタリアに、
説教を始めようとしたが、強張った面持ちのに気付くと、青い瞳をに向けたまま言葉をとめ、
気まずそうに視線をそらし、イタリアを開放した後、ゴホンと一つ咳払いをした。


「あー・・・こいつが迷惑をかけたな。すまない。」


そしてまた向き直ると、イタリアの頭をギュッと回し、二人で謝り始めた。

「えーっ!ドイツ〜!俺、何もしてないよ〜!ただ挨拶してただけだよー!」

イタリアはショックな気持ちを表情、体全体で表すので、
はなんだか段々、イタリアが可愛らしく思えてきた。
ついクスッと笑ってしまいそうになる。


「お前の挨拶は挨拶ではない!」

「ヴェ!」



「・・・あ、あの!」


ドイツと呼ばれる金髪碧眼の男性が、イタリアにまた説教を始めようとしたので、は慌てて声をかける。


「大丈夫ですよ、ほんとに挨拶してもらってただけなんで・・・。」


ね、とイタリアを見ると、イタリアは嬉しさを顔全体で表していた。


「ほらほら〜、だから言っただろー!このムキムキめー!」


「・・・・・・・・」

「ご、ごめんなさい・・・。」


ギッと、ドイツに睨まれてすぐに謝るイタリア・・・
まるで漫才でも見ているようだと、は笑いたいのだが、
笑っちゃいけない・・と、こらえる。
しかしそれより何より・・・


「あ、あの・・・それじゃ私・・・・・」




早く帰らなければ。



人と会ってしまったこと自体、かなりまずいのに、
つらつら話し込んで、余計な事を話してしまったり、
話さなきゃならなくなるのは面倒だ。
早々に、立ち去りたい。

がそう思いながら、体を反転させようとすると、


「えー!一緒にご飯食べようよー!君、日本の知り合いなんでしょ?
俺たちこれから日本の所にご飯食べに行くんだ!だから一緒に・・・。」


イタリアがまたもや至近距離でまくしたてる。


「・・・い、いえ・・・もう帰らないといけない・・んで・・・。」


近い近い近い・・・と、は思いながら、更に後ろへ下がり、胸の前で手をぶんぶんと振った。



逃げなくては・・・・・


トルコに外に出た事がばれる。

この人たちや他の人から、今の状況がトルコに伝わって、勝手に外に出たのがばれてしまう・・・・

やっぱり勝手に出てこなきゃよかった・・・と、思うも、後の祭り。
謝れば許してくれるかな・・・と、頭の隅で考えながら、
はとりあえず、今はこの場をなんとかしなきゃ!と、
べらべらと一人喋っているイタリアを見る。


「あ、あの・・・」

「なになに?あ、今度イタリアに遊びに来てよー。俺、案内するよ!大歓迎!」

「いや・・あの・・・」


喋り続けるイタリア・・・なかなか喋るタイミングがつかめない・・。


「あ、あの!私、本当に帰らないといけないんで!すみません!」


は言うだけ言って、もう逃げろ!と、反転し走り出した。


「え、あ!待ってよー!」

「あ、おい!イタリア!」











「はぁ・・はぁ・・・」


は全速力で走る。

息が辛い。こんなに必死に走ったのはいつぶりだろうか・・・。
思考がままならない中、必死に走って限界を感じ、
足を止めて歩きながら、ちらと後ろを振り返ると・・・



「待って〜〜!」

「イタリアー!!」


「ひっ!」


イタリアはを追ってきていて、更にイタリアを追うドイツまでおまけについてきていた。

そして、イタリアとドイツはすぐ後ろまで迫っている。


(ひ〜〜〜〜〜!!!)


は再度、地面を蹴り、力いっぱい走りだした。


走るのなんて久しぶりだし、元から得意じゃない。
滅多にやらないことをしたから、頭がガンガンしてきた。

(もう・・・無理・・・・)

は丁字路を目前にして、走っていた足を止め、歩きながら前を見る。


呼吸は荒く、苦しい。

頭がガンガンしているのに、更に痛くなるような光景が目の前に・・・・・



「・・・・・・トルコさん・・・」



そう、トルコが丁字路に立ち、こっちを見ていた。



見つかってしまった・・・・。




は走った疲労感がどっしりと増した気がした。


仕方ない・・もう素直に謝るしかない・・・。
はそう思いながら、トルコの方へと一歩一歩、足を進める。

そしてトルコの前に来ると、


「・・・・トルコさん・・!す、すみません!」


大きな声で謝りながら、頭を下げた。


「すみません・・・っあの・・・少しだけ・・
ちょっとだけと思って・・・勝手に・・・外に出て・・・すみません・・・」


走ってきたため、息が荒く、言葉を出すのが苦しい・・・。
それでも、必死に途切れ途切れ言いながら、トルコの反応を見るため、少し頭を上げる。


「・・・・・・」


トルコはしばし黙り・・・


ふっと、静かに微笑んだ。



「・・・・・・・」


トルコの沈黙に、肩を固くしていたは、
微笑んだトルコに拍子抜けをし、へ?と間の抜けた表情をする。




「・・・どこ行ってたんでぇ?」


トルコは微笑みながらの髪にさらりと触れた。


「えっ・・・あの・・・ちょっと・・海まで・・・・」


トルコの行動に、戸惑いながらは答える。

何か・・・トルコの様子がおかしい。
戸惑いを隠せずにはいられない。


「勝手に外行くなつったじゃねーか・・・心配しただろい?」


「あ!すみません!!本当に!・・声、かけようかと思ったんですけど・・お仕事中だったんで・・・」


トルコの手が、今度は肩に移った。

(なんか・・トルコさん・・どうしたの・・?)

相当怒ってるのだろうか・・と、はたじろいでしまう。


「気にしねぇで、声かけろい。お前のためなら仕事なんざぁおいて、どこでも連れてってやるからよぉ。」


トルコがそう言いながら、ぐっと顔を近づけてきたので、
はじっと見つめてくる深い緑色の瞳に耐え切れず、顎を引き、視線をそらした。


(な・・・何・・・?ほんとに何・・・?)


明らかに自分が黙って出てくるまでと違うトルコ・・・
一体、どうしたと言うのだろう。
怒っているのか・・・としか、思いつく事はない。
しかし怒っていて、こんな態度を・・?
はトルコが何を考えているのかさっぱりわからなかった。


一体、本当に何なんだ・・・・


頬を赤く染め、俯きながら、は心の中で叫んでいた。




そうこうしていると、背後から足音が聞こえてきた。

やってきたのはそう、



「ヴェ!トルコ!!」



イタリアとドイツだ。

イタリアはトルコの姿を見つけると、ビタッと足を止め、ドイツの背後に隠れた。



「・・・おーう、クソガキとドイツじゃねぇか。」



そんな二人に、トルコはを見つめていた顔を上げ、声をかける。


「ちゃ、チャオ!トルコ・・・・」

「・・トルコか・・この間の会議ぶりだな・・。」


ドイツの背後からオドオドと顔を出し、挨拶するイタリアに、


「ははは、そう怯えんなって、イタリア。」


と、トルコは笑いながら声をかける。

「・・・・・・」

には、なぜイタリアがトルコに怯えているのかが謎だった。



「う、うん・・・あ、あのさ・・・トルコ。
その子知ってるの?俺たち今そこで会ったんだけど・・・。」


「・・・・・」


「・・・・ヴェ・・」


イタリアが、ビクっとしながらドイツの袖をギュッと握る。

「・・・・・・・」

も思わず後ずさりしそうになった。

トルコの表情が・・・いや、仮面をつけているので表情はあまりわからないのだが、
オーラというか・・・とにかく、全身から一気に禍々しいオーラが発せられていた・・・。

不機嫌・・というか・・・とにかく怖い・・・・。

(ト・・・トルコさん・・・?)

は一体どうしたのかと、冷や汗をかきながらトルコを見つめる。



「あー・・・そうか・・そこで会ったのか・・・・」



トルコは少し低めの声で、うつむいてつぶやくように言う・・・
明らかに、不機嫌そうなその調子に、イタリアが慌てて言う。


「う、うん・・・なんか、日本に似てるよね!
日本らへんに新しい国できたっけとか思ったんだけど・・・」



「・・・・いい勘してるじゃねぇか・・・」


するとトルコがニィっと笑って顔を上げた。


「・・・・ド、ドイツ・・・ドイツ・・・・」


イタリアはガタガタと震えながら、小声でドイツに何かを訴える。
それはドイツも分かっているらしく、イタリアの腕を、ああ・・と叩いてなだめていた。


(ト・・・トルコさん・・・?)


も、初めて見るトルコのその表情に、慄く。



「ま、お前らどうせこれから日本のとこ行くんだろい?日本に聞いてくれや。」


「え・・・」


しかし次の時にはもう、いつものトルコに戻っていて、は少し驚きながらもほっとする。


さっきのトルコはいつもと違う・・・の知らないトルコだった。
いつも穏やかで優しいトルコにも、あんな表情をする一面があるのだと、
は初めて知り、そういえばもうすっかり心を許していたが、
知り合ってまだまだ日が浅いのだから、知らない面があって当然・・・・
少し油断しきっていた。気を引き締めようと、はごくりと唾を飲み込んだ。



「さ、帰んぞー。」


「あ、はい!」


すると、トルコに声をかけられたので、は慌てて返事をする。
そして歩き出したトルコの後を追った。


こちらを見つめているイタリアとドイツにぺこりと頭を下げると、
はトルコの横まで走って追いつき、ちらりとトルコの様子を伺う。


「・・・・・・・・・」


トルコは無表情だが、それがなんだか怖い・・・。

(怒って・・・るのかな・・・・)

は自然と緊張して、肩に力が入る。

そのまま二人とも無言の状態が続いたので、
は耐え切れず、口を開いた。



「・・・トルコさん・・・」


「ん?」



に声をかけられ、パッとトルコはを見る。
なんでもない、真顔のトルコだったが、それが今は逆に怖い・・・。

「あの・・本当にすみませんでした・・・勝手に外に出て・・・
他の人にも見つかってしまいましたし・・・。」

は少しうつむき加減にトルコに謝る。

怒ってない様子だったが、なんだかいつもと違うトルコに、
はもう一度ちゃんと謝っておこうと思ったのだ。

すると、肩にポンッと、トルコのずっしりとした大きな手がのる。


「気にすんない。そんな怒ってねぇからよ・・まぁ、物凄く心配はしたがな。」


トルコは柔らかく微笑んだあと、ため息を吐き、そう言う。


「あ・・・すみません・・・」


やっぱり、黙って出てきたのはまずかった・・・と、は落ち込む。
自業自得なのだが、改めて反省した。

すると、肩にのっていたトルコの手が、反対の肩へと回され、ぐいっと引き寄せられた。


「!」


は突然の事に、体を硬くして、驚いてトルコを見た。


「ま、次からは遠慮なく声かけろよ。」


にしっと笑いながらに微笑むトルコ。


「あ・・・は、はい・・・・」


は少しうわずった声で答えながらも、心の中で言葉にならない叫びを上げていた。

ピタリと肩と腕が、トルコの体にくっついていて、の鼓動は速さを増す。

体の距離が近い・・・
徐々に頬が熱くなるのが分かる。
きっと今、顔が赤くなっているはずだ。


(なんなの・・!?ほんとになんなの!?)


は真っ赤にした顔を見られぬよう、うつむきながら、
体が接している部分を意識せずにはいられず、体を硬くして心の中で叫んでいた。









そんな自分の様子を、トルコが頭上でにやにやと楽しんでいるとも知らずに――――。














終。


「これからもっと。」の視点でした。
イタリアのトルコに対する態度が本家と違っててすみません・・・。
イタリアとトルコが対峙した場面が出る前に話が固まっていたので、そのまま書いてしまいました。



2012/08/21....