クリスマスの夜。
十二月二十五日はクリスマス。
街はクリスマス一色になり。
テレビも雑誌もどこもかしこもクリスマスだ。
そして・・ここギルモア邸でもクリスマス色はついていた。
「〜♪〜〜♪」
二十五日のお昼。
フランは窓辺に立てたクリスマスツリーに飾りをつけていた。
もっと早くにツリーを立てたかったのだが
忙しく、今日なんとか予定をつけ飾り付けをしているのだった。
「・・・・クリスマスかー・・。」
そしてそんなご機嫌なフランを見ながらはつぶやいた。
は楽しく一緒に飾り付けをするでもなく
ソファに座りぼけーっと見ていた。
「そうよ。今日はキリストの誕生日・・・クリスマスよ。」
住んでいた地域からキリスト教かと思われるフランは
何年ぶりかの平穏なクリスマスに嬉しそうに
そして今までもそうしてきたかのように当り前に
ツリーを飾っていた。
「はっ、キリストの誕生日ねぇ・・・・。」
そこでジェットはテレビを見ながらそうつぶやいた。
「・・・なぁに?002。」
フランがツリーを飾りながらにっこりと微笑む・・・。
「いや、別に。キリスト教じゃない・・神なんて信じてない俺には関係ねぇな。と思ってよ。」
そうしてジェットは少し馬鹿にしたように首を振った。
「・・・あたしもそうだな〜・・キリスト教じゃないし・・。
今までもクリスマスって大して何もなかったから
あんまり周りの人みたいにはしゃがないな〜・・。」
「だろ?」
「うん。」
ジェットとは意気投合。
「まぁ・・キリスト云々じゃなくても・・只楽しむだけ・・
ってのでも良いんじゃないか・・平和でな・・。」
そこで今まで静かに進行を見守っていたハインが紅茶を飲みながらつぶやいた。
「うん・・それも一理あるよね〜。
日本ではそんな感じだし。ねぇジョー?」
は頷きながらジョーに振る。
「あ・・うん。そうだね・・・僕には良くわからないけど・・。」
「あ・・そか。」
孤児院で貧しく暮らしていたジョーに華やかなクリスマスはわからない・・。
少し部屋の気分がはりつめた・・。
「まぁ・・楽しくパーティーてのも悪く無いかもな。」
ジェットはソファにぐでーっとなりながらそう言った。
空気をなごますためか・・。
それともただ言っただけなのかはわからないが・・。
「そうだね〜・・じゃあ盛大にクリスマスパーティーでも開きますか!」
と、今日は暇ながそう言った。
「大きなケーキ作ってさぁ!張大人にいっぱい料理作ってもらって!!シャンパン飲んで!!」
「・・はシャンパン抜きでな・・。」
ハインがぼそっとつぶやいた。
きっと温泉でのことからだろう・・。
「ぐっ・・ま、まぁ取りあえずやらない?」
「良いねー、パーっと。」
まず乗ったのはジェット。
そして
「ええ、どうせ今日は豪華にしようと思ってたから良いわよ。」
フランも賛成した。
「じゃあ、買い出しにでも行くか。」
「そうだね。」
その場にいる全員も賛成のようだ。
「よーし!買い出しに行こうー!!」
「うえー・・疲れた・・・・。」
三時間に及ぶ買い出しを終え帰ってきた
、ハイン、ジェット、ジョーの四人はリビングへと入る。
「うわぁ・・。」
「あ、おかえりなさいー。」
するとリビングはまさにクリスマス色一色に飾られていた。
ツリーも完成し、キラキラと電飾を輝かせ
キラキラと金や銀の飾りが壁から壁へと渡っている。
「どう?頑張っちゃった。」
フランは部屋を見せて嬉しそうに言う。
「す・・凄いね・・これ全部003がやったの?」
ジョーは始めて実際に見るであろうクリスマスに飾られた部屋に
少し頬を高揚させていた。
「ええ、005や008に手伝ってもらってね。」
フランは得意げに微笑む。
「うわー凄いね〜。」
も部屋の豪華さに目を奪われなんだかどきどきしてきた。
そして台所へ荷物を置きそれぞれソファでくつろぐ。
買い出しは量と言い、街への距離といい結構な運動になったのだ。
時間もあれよあれよとすぎ、既にもう当りは闇に包まれ
気温も下がり月がこうこうと輝いていた。
そして夜の闇にクリスマスのイルミネーションがより一層引立つ。
「お帰りアルよー!待っててネー!今わてが美味しいご飯作ってあげるからネ!!」
「楽しみにしてるー!」
張大人の言葉には少し疲れた笑みを返しそう言った。
すると何やら二階からカタカタと微かな音が聞こえてきた。
「・・・上に誰かいるの?」
が不思議に思うと。
「ああ、007が何かクリスマス特別編を大急ぎで執筆してるみたいよ。」
フランは微笑む。
「あ〜・・じゃあご飯の時、グレートの大戯曲聞かされるんだ・・・。」
は、ははは。と乾いた笑いをした。
そうこうしていると時間はあっという間にすぎ、張大人が料理を持ってきた。
ケーキ。
七面鳥の丸焼き。
など定番なものはもちろん。
中華料理や、日本料理、ドイツ料理などなどギルモア邸らしい
色んな国の料理がテーブルへと並んだ。
戯曲を書きおわったグレートも下へ降りてきて
クリスマスパーティーの始まりだ。
「ではでは皆様用意は宜しいでしょうか・・今宵、聖なる日の・・。」
と、乾杯の音戸を取らせたグレートがまたもや延々と続く話しを始め
「カンパイアルね!!!」
張大人がそう叫んだ。
「ああ!?ちょっと、今おれが・・!」
『メリークリスマース!!!!』
と、グレートの言葉も空しく皆の笑いを含んだ声が響いた。
クリスマスパーティーは楽しければ、OKという名のもとわいわいと進んだ。
取りあえず料理を食べ。
ワインやシャンパンを飲み。
が飲もうとするとハインが取り上げ。
ジェットは大酒くらい上機嫌にジョーに絡んでいる。
ジョーは、あはは。と少し困っているようで
そしてグレートの戯曲を皆で聞き。
それが結構良い出来で思わずホロリとした。
部屋の熱気は上がりは一息つくため
一人ベランダへと出た・・・。
「ふぅ・・・・。」
外は部屋の熱気とは正反対にシンッ・・と冷えていた。
でも、その空気は温かい中にいたには丁度良く・・心地よくて、
ベランダの手すりによりかかりながら少しの間、薄れていく熱気の心地良い感覚に浸っていた・・。
「どうした・・?」
するとガララと窓が開いた。
「あ、ハイン。」
ハインはグラスを両手に持ち、やってきた。
「ほら。」
そしてそう良いながらグラスをに渡す。
中にはシャンパンが入っていた。
「え、良いの??」
は聞く。
「クリスマスだもんな・・ただし、これだけだからな。」
ハインはふっと笑う。
「ありがとうー。」
は微笑む。
そしてシャンパンを一口飲むと、炭酸がシュワっと口の中で広がった。
「っかー・・うまい!」
「・・・親父かお前は・・・。」
ハインとは、あははと微笑みあう。
「あ、そうだ・・。」
と、ハインがごそごそとポケットを探る。
「・・・はい。」
そしてに差し出したのは小さな包みだった。
「え・・?」
「クリスマスプレゼントだ・・・。」
ハインは微笑む。
その瞬間、微かな風が吹いた。
その瞬間のハインをは一生忘れないだろう。
ハインは部屋の明りに後ろから照らされ、
少し影をおびながら周りにはイルミネーションのぼやけた明かりがあり
風が吹き、髪を少しなびかせながら優しく微笑んでいた・・。
「・・・・あ、ありがとう・・。」
思わず見入っていたは、はっと我に返り慌てながらそう言った。
「今、開けていい?」
「ああ。」
は時間を少しかけ、丁寧に包みを開ける。
すると箱が出てきた。
箱を開けると・・そこには綺麗な青に緑がかった石のついたネックレスが入っていた・・。
そう・・その石の色は例えるならハインの瞳の色だった・・。
「うっわ・・・え、これもらって良いの??」
は高価そうなネックレスに思わず焦る。
「ああ・・安物だがな・・。」
ハインは苦笑する。
「全然安そうに見えないよ!!大事にするね!!」
「ああ・・・。」
がそう言うと、ハインは嬉しそうに微笑んだ。
「なーにやってんだよ!エロ親父!!!!!」
と、いきなり窓が開き怒鳴り声が響いた。
「・・・ジェット。」
空気ぶち壊しなジェットには笑いながら名前を呼んだ。
「おいおーい、おじさん〜。二人っきりで何してんだー?ああ〜?」
ジェットは完璧できあがっていた・・。
ジェットはの肩に手を回し、だらっともたれ掛かると、ハインにそう言う。
ハインは、はぁ・・と重いため息をついた・・。
「!変なことされなかったか!?大丈夫か!!」
ジェットはに聞く。
「あははー。大丈夫だよ、ジェットー。」
は苦笑しながらそう言った。
「お前と一緒にするな・・お前と・・。」
ハインはつぶやく。
「ああ?・・・・・ん?」
ハインの言葉に絡みそうになったジェットだがの持っているものに気が付いた。
「・・・・それなんだ?」
「ん?これ?ハインからもらったんだよー。クリスマスプレゼントー。」
は嬉しそうに微笑む。
「くりすますぷれぜんとー・・?」
ジェットはそう言い・・。
「おい!オヤジ!!抜け駆けしてんじゃねぇよ!!!」
そう言いながら切れた。
「一人だけプレゼントなんかあげやがってー!ずりぃぞ!!」
ジェットは叫ぶ。
「・・そんな約束はしていないし、お前は忘れてただけだろう・・」
ハインは冷静につぶやく。
「う・・・・。」
ジェットは言葉につまった。
「ま、まぁまぁ、ジェット。別にプレゼントなんてもらえなくても良いからさ。」
いまいち話しの内容をわかっていないはそう言った。
「・・・いーや!なんかあげるぞ!!プレゼント!!今日中に!!」
ジェットは叫ぶ。
「きょ、今日中に・・?無理じゃない??」
はあははと笑う。
「なんかないか・・なんか・・。」
ジェットは考えこむ・・。
「・・はっくしゅ!!」
と、いい加減冷えてきたがくしゃみをした。
「あ!」
と、ジェットが叫ぶ。
「わかった!俺からのクリスマスプレゼントーー!!!!」
そう言いジェットは・・・
「うわっ!!」
に抱きついた。
「プレゼントは寒い夜にぴったりの人間カイロだ!!どうだ!温かいだろう!!!!」
ジェットは常日頃の欲望を酒の力を借り、暴挙に出た。
「え!?ちょ!!」
は慌てる。
「もっと温めてやるー!!」
ジェットはそう言いを自分のジャケットの中に押し込む。
密着度アップ。
「ジェ・・ジェット・・。」
は慌てながらも・・。
「でも、温かいや・・」
温かさに浸っていた。
まぁ、十二月後半の寒空の下にしばらくの間いれば、誰でも温かさを求めるだろう。
「あらあら、なんかやってるわねー・・良いの?004。」
と、フランが賑やかな外の様子を見てハインにそう聞く。
まぁ・・何時ものことだ・・・。
とハインは思いながら、しかし少し苛々しつつ、フランに言う。
「・・・まぁ・・俺が手を下さなくても・・・。」
と、フランの横を見る・・。
バキン
と、何か凄い音がベランダに響いた。
ハインの見つめる先を、フランは、ああ・・。と予想しながら見ると・・。
そこにはヒビの入っているグラスを持って、にっこり微笑んでいるジョーがいた・・。
「・・・ごめん・・・・俺まだ死にたくない・・・。」
ジェットはそう小声で言うとを離したという・・・・・・。
メリークリスマーーーース!!
終。
2002/12/25....