鋼の手。













「ハインリヒの手は冷たいねー・・・。」




ある冬の日、買い出しの帰り道で、
は恋人のハインリヒと手を繋ぎながら、つぶやくように言った。


「・・・なら放せ。」


機嫌悪そうに返すハインリヒ。




004ことアルベルト・ハインリヒの手は冷たい。
身体も冷たい。

それは鋼で出来ているから。


「・・・・・・・・。」


カモフラージュ用の人工皮膚や、手袋をしていても、
握るとじんわりと冷たい手を、それでもは握っていた。


「・・・・放さないのか・・・。」


小さな声でハインリヒは聞いてみる。


「・・・放さないよ。」


そこまで冷たくないしね。

は返す。





は手を放さない。

ハインリヒの冷たい手を。

鋼で出来た冷たい手を・・・・。














終。



2017/10/28...