笑顔。













「ただいまー・・・。」




「あ、帰って来た。」


ある夜。
はバイトから帰って来た。

「おかえり・・。」

「おかえり。」


皆はを向かえる。


「ただいま・・・。」


しかし笑うの顔は少し暗かった・・。



「・・・・・・・・。」


ソファに座ったは黙りこんだ・・。


「・・・どうした?」


ハインがそっと微笑みかける。


「あー・・うん。」


は何かを言おうとしているが躊躇っている。


「何、悩んでんだー?」


ジェットはコーヒーを飲みながら聞く。


「・・・・・あのね・・。」


皆の問いかけには話すことにした・・。



「あたしの・・気のせいかもしれないんだけどね・・。
この間痴漢に襲われた子が、バイトに来たんだ。
で、その時のことを何でもないかのように・・笑って話すんだけど・・・。
なんか・・どこか辛そうなんだよね・・・。
まぁ、あたしの気のせいだと思うんだけどさ。」



はあはと笑う。








「・・・・辛い時でも・・笑ってる時ってあるよ。」




ジョーは悲しげな笑みを浮べ言う。


「人の建て前と裏は本人しかわかんねぇしな。」


ジェットはどこか冷たい眼をして言う。


「必死に笑って・・早く吹っ切れようとしていたりな・・・。」


ハインは遠い眼をして呟いた。




ここにいる誰もが暗い・・辛い過去を持っている人間・・。
その言葉は・・自分の経験からの言葉だった・・・。





「・・・・は・・隠してる辛さに気付いてあげられたんだな。」


ハインはふっと笑う。




「大抵の人は・・笑っていると笑い話として受けとめてしまうけど・・。
その裏には・・辛い部分がある・・。
だけど・・その辛さに気付いてあげられたなら・・・。
話を聞いてあげると良い・・・。
話を聞いてあげることは・・簡単だけど
聞いてもらった人はその簡単さとは裏腹にとても心が軽くなる・・。
だから・・隠している辛さを感じ取れたなら・・。
話を聞いてあげよう。
それが今その人にとって隠しているけど一番してほしいことだから・・。」




そう言うとハインはふっと微笑んだ。


その笑みは・・どこか悲しく辛そうだった・・・。




「・・・・・・うん。そうだね。明日話聞いてあげる。
もしかしたら本当に何でもないかもしれないけど・・。
でも・・・もしかしたらそうかもしれないから・・・。」



そう言うとはにっこりと笑った。






その場に居た誰もがその笑顔に微笑む。





自分たちも・・そうしてに救われた一人・・。


隠している辛さを感じ取られ・・。

話を聞いてもらった・・。

時には泣きながら・・嘆きながら・・。

そんな自分をは受けとめ。

一緒に泣いてくれた・・・・・・・。

それだけで十分だった・・。

それだけ心が救われた・・・。


だから・・何時までも側にいて欲しい・・。






そう、心から願う・・・・・・・・。










終。


2002/10/07....