だから・・・。













穏やかに進む、ある日の午後・・・。
004ことアルベルト・ハインリヒは
午後の陽だまりに包まれ新聞を読んでいた・・・。









「あたしはジェットの物じゃない!!!!!」









「!?」


と、突然聞こえてきたのは人間だが家族の一人。
の大声だった。



(何事だ・・?)


ハインが新聞から眼を上げると
キッチンの前でとジェットが睨み合っていた。




「物だなんて言ってねぇだろ!」

「言ってるようなもんじゃん!!
あれするなこれするなって・・・なんでそんな事
ジェットに言われなきゃいけないわけ!!??」

「う・・うるせぇな!!言う事聞いてりゃいいんだよ!!!!!」

「なっ・・何それ!!??」





「・・・やめろ二人とも・・・。」





とジェットが争そう中、ハインが止めに入った。

とジェットは恋人同士だ。
ジェット以外にも・・に思いを寄せていた者もいたが・・。
の気持ちはジェットに向き・・。
二人は恋人同士となった。
が、なった今でも他の思いを寄せていた者は
未だに思いを寄せている。
そしてハインもその一人・・。
が辛そうに叫んでいるとなれば黙ってはいられない・・。
ハインにとっての幸せが第一なのだから・・。


「どうした?何があった?」

ハインは優しくに問う。

「・・ハイン・・・。」

そんなハインにはハインの服を頼り無さげに掴む。

「!?」

と、そんな光景を見ていたジェットは更に切れた。





「そうやって隙だらけだから他の男につけこまれるんだろうがっ!!!!!」




「っ!!だから!つけこまれてなんて無いって・・言ってるのに・・・・・・っ!」


言い終わるのと同時には溢れて来た
涙を抑えられず手で顔を覆った。


「!?」

「!?」


これにはジェットもたじろぎ。
そしてハインはギロッとジェットを睨みつけた。


「俺はの話しを聞くから・・お前は頭を冷やして来い・・・行こう・・。」


そう言うと、ハインはを連れ心地良い風の吹くベランダへと向った。



「・・・・っくそ!」


ジェットは頭をかきむしった。











「・・・・・・っ。」


窓越しに・・ハインに持たれかかり泣くの姿と
そんなに優しく微笑みかけるハインの姿を見て・・。
ジェットはいても立ってもいられない様子でドアの近くに立っていた。

本当は今すぐ駆け寄って慰めたい・・抱きしめたいのに・・・。
馬鹿な意地がそれをとどめている・・。

事の起こりは昨夜の事・・・。

バイト先にを迎えに行ったジェットが見たのは・・。



人間の男と楽しそうに話すの姿・・・。



分かっている・・何でも無いことは・・。

ただ話してただけだということは・・。


でも・・気が気では無くなり・・・。
今朝、つい言ってしまった一言。


「他の男と話すんじゃねぇよ・・・。」


それから喧嘩になった・・。


分かっている・・そんなことは無理だってことは・・。
自分が馬鹿なこと言っている・・ということは。
だが・・心の波はおさまらない・・・・・。





自分がサイボーグだから・・・人間では無いから・・・。





人間と居ると・・いつか・・が捕られてしまいそうで・・。

そんな事は無い・・は自分を思っていてくれている・・。

とは思っているのに・・・心の隅に残る・・・黒い影・・。



ずっと一緒に居たいから・・。

大好きだから・・・。

大切だから・・・・・・。



だから・・・だから・・・・・。










「・・・!」

ふっと気付くと、ハインの隣にの姿は無かった。



「004・・は?」


「・・・・頭冷めたか・・海を見てくる・・ってよ。
・・・・・お前の気持ちも分かるが・・を信じてやれよ・・。」

ハインはまったく・・と溜息を吐きながら言った。


「ああ・・・。」


ジェットはそう言うとの居る砂浜へと向った・・・。












!」




「!・・・ジェット・・・。」


ジェットに呼ばれはゆっくりと振り返る。







二人は流れついてカサカサになった流木の上に座った。


「「・・・・・・・・・・。」」


沈黙が気まずい・・・。
そんな沈黙を破ったのはジェットだった。



「あの・・な・・。」


ジェットは柄にも無く重苦しそうに話し出した。


「お前に・・あんなこと言っちまったのは・・お前が・・人間の男と・・話してて・・。
それで・・・・・お前が捕られちまいそうで・・・焦ってたんだ・・。
お前が・・好きだから・・大好きだから・・大切だから・・・。
捕られるのが怖くて・・居なくなるのが・・・・怖くて・・・・。」


ジェットの声は震えていた・・。
何時か居なくなる事を想像して・・込み上げて来る涙。



「・・ジェット・・・・・。」


「!」


は名前を呼び・・そしてそっとジェットを抱きしめた。


「分かってる・・分かってるよ・・。
私にあんなこと言って・・嫉妬するのも・・。
私を思ってくれてる証拠なんだって・・。
私を大切にしてくれてる証拠なんだって・・。」


・・・・。」


「だけどね・・・安心して。
私は離れていったりしないから・・。
ジェットと同じ位・・私もジェットが
大好きだから・・大切だから・・。
ずっと一緒に居るから・・・・。」





・・・っごめんな・・・!」





ジェットはを思いっきり抱きしめる。






「ジェット・・・だからもう、あんまり嫉妬しないでよね!
・・・・・嬉しいけどさ・・。」


「ああ・・なるべくしない。」


「なるべく?何それ〜。」


ジェットに抱き付きながらくすくすと笑う


「なるべくだよ。なるべく。」


そして幸せそうにを抱き微笑むジェット。








そんな二人を・・夕陽だけが見ていた・・・。











終。


2002/08/23....